レオパレス21が目指す
「社員が主役の会社」とは?

近年、人的資本の重要性に対する注目度が非常に高まっています。
株式会社レオパレス21でも、昨年11月、リクルートワークス研究所の堀川氏を招いて人的資本経営の潮流や他社の取り組み事例などを紹介頂き、代表取締役の宮尾文也社長以下役員総勢13名でわが社の人的資本経営の在り方を話し合いました。
それを受けて今後、どのような考えに基づき、どのような活動を行っていくのかについて、株式会社レオパレス21代表取締役の宮尾文也社長にこれまでの歴史を振り返りながら語って頂きました。
スマートロックとは?
従来の鍵を持ち歩くことなく、スマートフォンの専用アプリやICカード、テンキーでの暗証番号入力など、複数の認証手段で玄関扉の解除ができるシステムのこと。
Smart Lockの詳細はこちら
Chapter 01
CHAPTER 01
当社の成長の原動力は
「新しい価値の創造」
レオパレス21のこれまでの歩みを教えてください。
宮尾
「新しい価値の創造」を実現の背景は?
宮尾
当時でいう「新しい価値の創造」とは、人口流入や学生の進学・就職で東京に来る方々向けに何が求められているのか、そうした社会的なニーズを正確に汲み取ることでした。
当時のレオパレス21では「ゼロ・アンド・ゼロ」と言い、敷金・礼金をゼロにするなど、従来の不動産屋にはなかった点に取り組んだことが成功の大きな要因になっていたと思います。
その後、2018年頃に施工不備が発生した背景、企業文化とは?
宮尾
当社は施工不備問題が発生するまで、どこかの企業グループに属するわけではなく、業界のルールや慣習に縛られることなく、そういったものを超越する形で進んでいました。それが「新しい価値の創造」だったのです。
しかしそれは裏を返せば、唯我独尊的な考え方に陥りがちだったかもしれません。トップダウンの文化があり、従業員や経営陣も含めて同調的な空気のなかで、「指示されたことをやっていれば良い」という姿勢があったのは否定できません。
期待値を守るために、現状を止めることができず、検査などが二の次になっていました。スピード感や成果を重視する部分と、多様な視点を取り入れる部分が相反する状況が見られました。
2018年に施工不備問題が発覚し、第三者委員会により企業文化や風土に改善が必要だと指摘されました。私たち自身も、それが施工不備問題発生の背景にあると認識しました。

Chapter 02
CHAPTER 02
「社員が主役の会社」は
社員から生まれた言葉
変化が激しい時代において今後の経営に必要なものとは?
宮尾
会社が持続的に繁栄・成長し、事業活動を推進する上で最も重要なのは「人」です。ですから今後の当社は、「社員が主役の会社」を目指していきたいと考えています。不確実性の高いVUCAの時代において、従来のやり方や前例に従って言われたことをやるだけでは通用しません。個々の意思を持ち、チームで創意工夫していけるような会社になる必要があります。
施工不備で入居率が下がり、業績が悪化し、社員も自信を失っていた時期がありました。そんな今から約3年前、「ドリクエ」という社内イベントを実施したのです。このイベントは、有志社員がいくつかのチームを組んで、経営陣に対して自社をよりよい会社にしていくためのプレゼンテーションをするというものでした。「社員が主役の会社」というキーワードは、まさにその当時のひとつのチームのプレゼンテーションからきています。
「これまでの当社は、どちらかといえば『会社が主役の会社』だった。自分たちは主役の周りにいる傍観者のような存在だった。けれど、今後10年・20年・30年と社会人生活を送っていくのであれば、自分たちが脚光を浴びるような活動ができる会社にしていきたい。『社員が主役の会社』を、自分たちで作りあげていくんだ」と、私たち経営陣に向けて発信してくれました。私はその言葉が、心から嬉しかったです。
「社員が主役の会社」実現のために取り組んでいることと、今後の計画は?
宮尾
既に取り組んでいることとしては2つあります。
1つは執行役員以上が集まり実施するラウンドテーブルです。ここでは人的資本にまつわるフリーディスカッションをしています。何かを決議するための会議ではありません。人に主軸を置いて会社の目指すべき方向性や個々人の思いを自由に話す場です。売上や契約件数とは別の角度で話をする機会を設けることが最初の目的でしたが、実際に話してみると経営陣でも人に関する意見はかなり分かれるということもわかりました。決議の場ではないため、従来であれば事業部制で縛られていた内容も、他のセクションから多様な意見が出るようになったというメリットもあります。

リクルートワークス研究所堀川氏を招いての2024年11月の人的資本ラウンドテーブル

リクルート堀川氏紹介の「昨今の人的資本経営の潮流と他社事例」要旨
- リクルート社が実施した働く人の意識調査(*1)において、全体の6割から7割の従業員が、①自分のスキルや経験がどのように活かせるかを明確にできておらず、②現在の職務とのフィット感も実感できていないことが明らかになっている
- 人的資本経営においては従業員一人ひとりの多様な強み・持ち味を引き出し、「すべての人を活かす」ことが重要な視点である
- 従業員エンゲージメントと退職率には一定の相関があり(*2)、特に「自らの強みや持ち味を活かせている」という実感は、定着や意欲に影響を与える要素の一つと考えられる(*1)
- リクルート社の人的資本経営の起点は「個の尊重/Bet on Passion」という価値観を起点とし、新規事業提案制度「Ring」や社内公募制度「キャリアウェブ」などを通じて、従業員の能力や意欲を引き出し、人的資本の価値向上を図っている
- その他複数社の人的資本経営における取組を具体的な事例として紹介

人的資本の在り方について活発に議論する役員たち
宮尾
2つ目は「新生レオパレス21」を目指したリブランディングプロジェクトです。こちらも有志の社員がプロジェクトの構成員です。部署や階層の垣根を超え、通常業務も忙しいなかで時間を作り、積極的に意見を交わして進めてくれています。新たな当社を形づくる重要なMVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・クレド)の策定も、このメンバーでやってくれました。未来に向かって歩みを進める当社の変化・変革を、社員一人ひとりが自分事として行動できるためにはどうしていくべきかを考える場です。
一般的にごく少数の人間だけで考えるときは、どちらかというと危機的な状況です。一方で成長フェーズでは、多様な人材が集まり話をする方が良いと私は考えています。リブランディングプロジェクトはまさにその一例で、年齢層の高い経営陣だけでMVVCを決めるのではなく、さまざまなバックボーンを持つ従業員たちが集い、熱い思いを乗せて活発に意見交換してくれています。
「社員が主役の会社」というのは、既存の言葉やコピーライターが書いた言葉ではありません。社員の声から生まれた生の言葉です。リブランディングも、他の会社の話ではなく自分たちの会社の話です。自分の会社を来年は、10年後は、どうなっていきたいか。これをインタラクティブなコミュニケーションで、熱意ある有志の社員が言語化していきました。
社員が主役の会社」というビジョン実現のための注力ポイントは?
宮尾
何でも言ってもらえるような環境と関係性作りです。発言の心理的なハードルを下げたいと思っています。

Chapter 03
CHAPTER 03
組織の壁を越えた
活発なコミュニケーションの
会社へ
「社員が主役の会社」を実現するための具体施策とは?
宮尾
まず大きな取り組みとして、2025年4月に人事制度の改定を行いました。当社も施工不備問題により厳しい時代があり、従業員には相当無理を強いてきました。希望退職制度により1067人の社員が去り、現在では正社員数は約2800人となっています。一部の事業が中断・停止となり、一人ひとりの従業員にかかる負荷は相応に高いものでした。
そうした状況を乗り越え、現在は事業が改善して収益確保の見込みがある状況にまで回復しました。ようやく報酬への還元ができると判断し、今回の制度改定に至りました。今後も報酬への還元は継続していきます。報酬だけではなく、勤務地の選択制も始めました。また、熱意があって実力を備えた若手人材を積極的に管理職に登用しています。今後、従業員の意欲や能力を引き出すことが、当社の成長の大きな礎になると考えています。
いずれにしてもこれで終わりではありません。社内外のさまざまな方の意見を聞き、状況を把握しながらブラッシュアップしていきたいと思います。
「社員が主役」である状態の測定をし、ブラッシュアップする方法とは?
宮尾
11月の人的資本ラウンドテーブルでも、リクルート堀川氏からお話のあったように、一般的に従業員エンゲージメントと退職率には明確な相関がみられるといいます。この会社で自分の強み・持ち味が活かしきれていないと思えば従業員は去っていく。
宮尾
2023年より、当社ではGeppo組織サーベイというシステムを採用し従業員のエンゲージメントを測っています。従業員一人ひとりの率直な思いを定期的に吸い上げ、組織課題の改善につなげています。定量的な結果をもとにチームとして、上司と一緒になって会話する機会を増やし、コミュニケーションを取ってもらうよう働きかけています。
エンゲージメントを高めるためには、やはりコミュニケーション・対話が重要です。そのきっかけに何を使うかという点で、当社ではGeppo組織サーベイが非常に役立っています。
チーム全体・一人ひとりを見ていく立場の人間は、やはり管理職です。当社ではマネージャーがそれに当たります。ただ、上司・部下間だけのコミュニケーション以外にも、組織の枠を離れた別の存在がいるとさらに良いと思っています。直属の上司だと話しにくいこともありますから、他にコミュニケーションの場があると良いと思っています。それを強く感じたのは、先ほどお話ししたリブランディングのチームです。違うセクションや年齢が異なる人たちがコミュニケーションを取りあえるというのは、エンゲージメントを高めることにもつながってきます。
全国拠点において実施しているタウンミーティングとは?
宮尾
現在、47都道府県にレオパレス21の数多くの物件があります。基本的には賃貸管理業ですから、各都道府県に必ず支店があり、小規模な支店では5、6人の支店もあります。チームビルディングでもコミュニケーションにおいても、孤立してしまうことはいちばん良くないことだと考えています。
タウンミーティングでは、まずは私たちから経営に関する情報発信をしています。社内の通達でも紙やウェブ媒体で流れている情報は届きづらくなるため、支店に顔を出し会社の状況を含めてさまざまな話をしています。プレスリリースなどの情報も従業員にとっては他人事として受け取ってしまいやすいので、丁寧に細かく説明することを意識しています。
その上で従業員一人ひとりの質問や言いたいこと、やりたいことを聞いています。タウンミーティングでの従業員のその発言から、人事制度の改定につながったこともあります。

Chapter 04
CHAPTER 04
自分事として考え、
熱意をもって
周りに影響を与える人材へ
「社員が主役の会社」実現のために、社長から従業員へのメッセージ
宮尾
会社の変革は一朝一夕には起こり得ません。同じように、一人ひとりの人生も一朝一夕にうまくいくものではないと思います。だからこそ、視点や考え方を中長期でとらえていきたい。一人ひとりが今日や明日、来月のことだけでなく、もっと将来のことを考えるべきだと思います。
例えば入居者対応にあたる従業員にとっては、直近の入居率だけを見るのではなく、入居者の方が将来的に快適に生活し、社会に貢献し、日本がさらに良くなることを意識しながら働いてもらいたい。そういった面で言うと、「社員が主役の会社」というのはあまり難しいことはなく、自分の直面する出来事を自分事としてとらえて行動するということだと考えています。
また、「主役」という言葉を使うことで「脇役」を否定するつもりもありません。そもそも我々の仕事自体が、主役ではありませんから。「インフラとして社会を支えているのが我々レオパレス21の建物・部屋である」という認識を持ち、そのうえで「主役」という言葉をどう理解するか。これを従業員の皆さんに考えてもらいたいです。
自分事として考えることによって、行動も変わっていく。熱意が生まれ、周りの人や同僚・家族も含めて良い影響を与えてどんどん巻き込んでいく。ワンチームでスクラムを組んで、世の中に貢献し変容してもらいたいです。
それを体現するために従業員の皆さんに意識してほしい点は?
宮尾
気持ちとして、「守り」には入ってほしくないですね。
自分たちが行動するためには、自分の意思をしっかり持たなければなりません。それを可能にする素地のある社員が、当社には集まってきてくれていると思っています。また今後は会社としても社員をバックアップする環境を作りたいです。そうすることで、さまざまなコミュニケーションの場において、より良く物事を進めていけると思っています。これを実現した後の新生レオパレス21を私も楽しみにしていますし、みんなでワクワクするような未来を築いていきたいです。
最後に社員の皆さんに一言メッセージを
宮尾
社員が主役という会社で、一人ひとりが自分事として行動する。主役という言葉の裏には、自覚と責任があると思います。皆さんはそれを実現できる人材だと思っています。ともに手を携えて、未来を一緒に作っていきましょう。

第1回人的資本テーブルのゲストに招いたリクルートワークス研究所堀川氏と
当社は1973年(昭和48年)に設立されました。財閥系ではなく、創業者が一人で、徒手空拳で始めた会社です。創業時は不動産の仲介からスタートし、その後、戸建住宅・アパートの販売に移行しました。約40年前にアパート事業を開始し、現在では全体のマーケットの1割を占める企業にまで成長しました。当社の成長の原動力は、企業理念である「新しい価値の創造」だと考えています。