社長メッセージ 持続的な成長を実現し社会に価値を届ける 代表取締役社長 宮尾 文也

「社員が主役」の会社に向けて
企業風土は着実に変化

強いリーダーシップを持つ創業者によって築かれた当社では、長年トップダウン式の経営が行われ、社員が主体的に考え、行動する風土が育まれてきませんでした。施工不備問題が発覚した際、問題の早期把握や是正を妨げた原因の一つとして指摘されたのも、こうした企業体質です。企業体質は経営者が代われば直ちに変わるものではなく、2019年に私が代表取締役に就任した後も、必ずしも社員が主体的・自律的に行動する文化が定着しているとはいえませんでした。

こうした体質を変え、一人ひとりが自発的に考え、行動する「社員が主役」の企業文化を形成したいという思いから、2025年3月期には新生レオパレス21として前進していくためのMVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・クレド)を制定しました。社員が中心となった策定プロセスも契機となり、現在は、会社が社員に主体的な行動を求めているという認識が浸透し、積極的な提案が出てくるようになりました。各部門の管理職がMVVCを話のきっかけとするなど、共通の価値観に基づく対話も増えています。まだ道半ばではありますが、自ら発言・行動する姿勢は、着実に根付き始めています。

人々の暮らしと企業を支える
社会インフラとしての役割

当社は、単身者向け賃貸住宅の提供を通じて、進学や就職、転勤など、入居者様の人生の新たな出発に寄り添っています。人生の多様な段階で生じるひとり暮らしのニーズに応え、安心して生活できる住環境を提供する当社の事業は、社会インフラの一つであり、そこにこそ当社の存在意義があると認識しています。

こうした役割は、法人のお客様に広くご利用いただいていることにも表れています。企業が人事異動や事業拠点の新設などを行う際には、従業員の住まいを必要な地域で速やかに確保しなければなりません。一方で、企業が社宅や寮の自社保有を見直し、外部の賃貸住宅を活用する動きも進んでいます。このような中で、全国に展開する当社の物件ネットワークと、家具・家電を備えた一定水準の住環境は、法人顧客の住居手配に伴う負担を軽減し、円滑な人員配置を支えるものといえます。

また、住居費の負担が増える中、企業による従業員への住宅支援は、福利厚生の充実にとどまらず、人材の確保・定着や、従業員が安心して働ける基盤づくりの面でも重要性を増しています。当社は、こうした企業と従業員双方のニーズに応えています。

オーナー様に対しては、大切な資産を守り、将来にわたって資産価値を維持するとともに、次世代へ円滑に継承できるよう支援する使命があります。資産を適切に維持・管理し、単身者の住まいとして活用することは、オーナー様・入居者様双方への価値提供につながります。

さらに、地域の賃貸需要に応えるためには、必要な場所に適切な物件があり、良好な状態で維持されていることが前提となります。当社は、地域ごとの需要を踏まえて物件を建築し、運営・管理することにより、地域で働く人々の生活基盤と経済活動の一端を支えています。

経営の価値基準は
収益性と未来志向

経営判断においては、収益性を前提としながら、将来の価値創出や持続的な成長につながる未来志向の視点を大切にしています。企業価値を高めるには、収益性や成長性といった経済価値と、事業を通じて生み出す社会価値を両立させることが不可欠です。そのため、当社が創出すべき社会価値を明確にし、その実現に向けて必要な施策を具体的な事業活動に落とし込むことを重視しています。

その一つが、単身者向け住宅の運営・管理の高度化です。入居者様に安全・安心な環境を提供しながら、賃貸管理業務の生産性を高めていくにあたり、DXは重要なテーマとなります。例えば、管理人が常駐していないアパートでは、トラブル等の発生時の初動対応に課題があります。この部分にデジタル技術を活用して管理機能を高度化し、問題の早期把握と迅速な対応を可能にすることで、より効率的な管理体制の構築ができると考えています。

2026年3月期を振り返って

2026年3月期の事業は順調に進展し、中期経営計画「New Growth 2028」を上回る業績で着地できました。賃貸事業では、入居率は計画にわずかに届かなかったものの、おおむね想定通りに推移しました。特に、インフレをはじめとする事業環境の変化を的確に捉え、家賃水準を維持しながら入居者を獲得できたことが、収益力の強化と生産性向上につながったと考えています。

将来的な管理戸数の維持・拡大に向けて本格的に再開した開発事業も、初年度から計画を大きく上回りました。受注のほとんどが既存物件のオーナー様からのもので、相続税対策を含む保有資産の運用ニーズに適切に対応できた結果だと捉えています。こうした需要は当面継続すると見込んでいます。

賃貸事業、開発事業ともに、初年度の進捗はおおむね計画どおり、あるいは計画を上回る水準となりました。この実績を踏まえ、中期経営計画の2年目、3年目については当初計画を上方修正しました。今後も増収増益の基本方針を維持しながら、上方修正後の計画達成に取り組んでいきます。

当社では中期経営計画「New Growth 2028」を、これまでの事業再生を確かなものとし、次の成長ステージに進むための経営基盤を構築するターンアラウンドと位置付けています。施工不備問題を経て業績回復を果たしつつある今、事業基盤と経営基盤を揺るぎないものにすることが重要です。初年度の実績を通じ、その基盤は着実に形成されつつあると実感しています。

業績推移。2009年3月期から2026年3月期までの売上高(賃貸・開発・その他)と営業利益の推移

今年度の見通しと事業戦略

今年度の事業環境については、関税政策や為替変動などの不確実性はあるものの、事業活動への影響は限定的だと考えられます。そのため、基本的には前年度からの方針を継続し、着実な成長を図っていきます。一方、インフレへの対応は今後の経営における重要な課題であり、コスト上昇に適切に対応しながら、価格水準の適正化や生産性、業務効率の向上を進め、収益力を維持・強化していく必要があります。

賃貸事業では、企業の新卒採用や人事異動、事業拠点の拡充に伴う法人需要に加え、外国籍人材の住まいの確保というニーズも引き続き見込まれます。採用市場の売り手優位が続き、福利厚生の一環として社宅を確保する動きもあることから、単身者向け住宅の需要は底堅く推移すると予測しています。今年度も法人顧客の拡大を図ると同時に、個人では外国籍人材および大学生の利用促進に注力していきます。

開発事業においては、インフレがオーナー様の投資意欲に一定の影響を及ぼす可能性がありますが、資産価値の変化や相続への備えという観点から、不動産を活用した資産防衛のニーズは引き続き存在すると考えられます。こうした環境を的確に捉え、オーナー様の資産形成・承継ニーズに応じた提案を進めていきます。

持続的成長を支える賃貸事業の高度化と
人材・組織力の強化

これまでの数年間は財務基盤の回復を最優先の経営課題として取り組んできましたが、現在は持続的成長に向けた最低限の基盤を整えることができたと認識しています。今後はこれをより強固なものとしていくため、賃貸事業の高度化と人材・組織力の強化に重点的に取り組みます。

賃貸事業には、トラブル対応やメンテナンス、オーナー様とのコミュニケーションなど、人の力を必要とする業務が数多くあります。そのため、人が担うべき業務を大切にしながら、デジタル技術を活用できる領域との役割分担を進め、サービスの質と生産性の双方を高度化することが重要です。特に、物件内のトラブルや設備の状態を遠隔で把握・管理する仕組みについては、積極的にDXを活用して構築していきます。当社物件に導入されている独自の通信回線であるLEONETなど、既存インフラを有効に活用し、より効率的な管理体制の構築を目指します。

一方で、どれほどデジタル技術やAIが進展しても、事業を動かし、顧客との信頼関係を築くのは、やはり人間です。持続的成長を実現するためには、一人ひとりが会社の目指す方向を理解し、自律的に判断・行動できる組織をつくることが不可欠です。当社は、MVVCの浸透を通じて人間力を継続的に高め、より強く筋肉質な組織の構築を進めていきます。

人間力というとき、特に重視しているのが「現場力」です。現場力とは、業務を通じて培った知識や経験に加え、相手の立場や、自らの判断が及ぼす影響まで想像し、適切に行動する力といってよいでしょう。こうした力を養うには、実務経験を重ね、振り返りや周囲からのフィードバックを通じて学びを深めて、次の行動につなげていく必要があります。そのため、事業環境や現場の課題に応じて、研修や教育の内容も継続的に見直していきます。

また、入居者様やオーナー様だけでなく、取引先や協力会社を含むステークホルダーを顧客として捉え、それぞれの立場を尊重する姿勢も欠かせません。ステークホルダーの皆様とよりよい協力関係を築くことが、最終的には利用者様への提供価値の向上につながるのです。

こうした人材の力を企業価値向上につなげていくため、当社は人的資本経営やウェルビーイング経営にも力を入れています。その本質は、従業員の心身の健康や働きやすさを高め、一人ひとりの意欲や能力を組織としての成果に結びつけることにあります。2026年3月期には「健康経営銘柄」に初選定され、「健康経営優良法人 ホワイト500」にも6年ぶりに認定されました。これまでの施策や組織の変化が評価されたものと受け止めています。こうした評価を励みに、今後も、従業員が仕事や会社に誇りを持ち、力を発揮していける環境を整えていきます。

エリア支社制への転換で
自律型組織への脱皮を目指す

社員一人ひとりがクライアントファーストの視点で主体的に判断し、行動できる組織を実現するための具体策の一つが、2028年3月期に本格移行を予定しているエリア支社制です。各地域の経済活動やニーズの変化は、東京の本社にいるだけでは十分に把握できません。地域の実情をよく知る現場の人々が自ら考え、迅速に判断し、適切に施策を実行できるよう、各地域への権限委譲を段階的に進めています。

今後は、各地域が目標や予算を設定し、地域ごとの課題に応じた活動を実践することで、自律的な運営を根付かせていきます。各拠点の収益データはすでに揃っています。これを踏まえて、どのように生産性を高め、どのような活動に取り組んでいくのかを、現場の従業員が考え、責任を持って担う体制へ転換していきます。

社会課題を起点とした
新たな価値の創出

当社が目指すサステナビリティ経営とは、環境や社会課題を自社の事業と切り離さず、日々の事業活動を通じて社会価値と経済価値の双方を生み出していくことです。短期間で成果が表れるものではないため、中長期的な視点で継続して取り組むことが重要だと考え、「レオパレスグリーンエネルギープロジェクト」やZEH-Mの推進など、自社事業と関わりの深い領域から取り組みを進めています。こうした取り組みは、環境負荷の低減にとどまらず、既存事業や従来の仕事の枠組みを見直し、新たな価値創出へ踏み出す契機にもなるでしょう。環境・社会課題を起点に、顧客への提供価値を捉え直すことで、より効率的な働き方を支えるサービスや新たな事業の創出につなげていきます。

地域社会を支える取り組み

当社が社会や地域から必要とされ続けるには、当社の住宅や管理の基盤を生かし、地域課題に継続的に対応していくことが重要です。地域の活性化は当社の事業活動にとってもプラスになるため、地域に向けてどのような支援ができるかを考えていく必要があります。

その一環として取り組んでいるのが、行政と連携した外国籍人材への住まいの提供です。人手不足を背景に外国籍人材の採用を必要とする事業体が増える一方、住居の確保や地域での生活にはさまざまな課題があります。当社による生活サポートサービスの提供は、外国籍人材の受け入れを促進し、行政の人材政策の実効性を高めることにもつながります。行政や企業、日本語教育支援などを担う関係者と連携し、外国籍人材が安心して生活できる環境を整えることで、地域企業の人材確保と地域経済の活性化にも貢献していきます。

また、災害時などの一時的な住まいの提供も、当社の果たすべき役割の一つと考えています。これまでも災害発生時の一時的な住居の提供や、ウクライナからの避難民の受け入れなどに取り組んできました。これらは直接的な経済価値には結びつきませんが、当社の住宅を地域社会の生活支援に役立てることには、大きな社会的意義があると考えています。

取締役会における議論の進化

この1年間で、取締役会における議論は一層活性化してきたと実感しています。当社が危機的な状況にあった時期には、資金繰りをはじめとする足元の課題への対応が議論の中心でしたが、現在は、5年後、10年後を見据えた事業展開など、中長期的な視点から持続的成長や企業価値の向上について検討する機会が増えています。こうした議論において、非業務執行取締役の意見は非常に参考になります。特に、事業会社では議論が深まりにくい資本効率や資本配分のあり方について、多様な視点から議論できる意義は非常に大きいと感じています。

直近では、AIを業務効率や生産性の向上にどのように活用するかが重要なテーマの一つとなっており、他社事例や当社の取り組みを共有しながら、AI活用の可能性やリスクについても議論しています。取締役会で得られた視点を、実際の経営にどのように反映させていくかが重要だと認識しています。

社会に必要とされる企業で
あり続けるため
当社の住宅や管理の基盤を活かし
地域課題に継続的に
取り組んでいきます。

企業価値向上に向けて
ガバナンスが果たす役割

ガバナンスの重要性は、経営上のリスクを適切に管理するとともに、将来の成長に向けて必要なリスクを取り、挑戦を後押ししていく点にあると考えています。この考え方は、経営レベルだけでなく、各部門における意思決定や権限委譲にも通じるものです。現場への権限委譲を進める際にも、適切な監督によるリスク管理と、自律的な運営を両立させていくことが重要です。

取締役会の実効性については、実効性を検証するために取締役を対象に毎年アンケート調査を実施し、その結果をもとに課題を把握して、継続的な改善につなげる体制をつくっています。

今後の取締役会には、さらに多様な経験やバックグラウンドを持つ人材の参画が求められます。発想や視点の固定化を防ぎ、異なる領域で経験を積んだ取締役の意見を引き出して経営判断に生かしていくことが、取締役会のあるべき姿だと考えています。

ステークホルダーの皆様へ

当社は、財務面を含め、再生のステージをひとまず完了することができました。現在は新たな成長へ向け事業基盤を強化し、次の展開への準備を進めています。今後も賃貸管理事業を中核に、運営・管理の高度化を図るとともに、周辺領域へ事業の可能性を広げていきます。

新生レオパレス21が目指すのは、社会インフラとしての役割を果たしながら、持続的に成長していく企業です。その実現に向けて私が果たすべき役割は、事業基盤を強化するとともに、社員一人ひとりが力を発揮できる組織基盤を整備することだと考えています。

その基盤の上に、当社の将来の姿を形づくっていくのは、これからを担う一人ひとりの社員です。私は、社員が新たな発想を生み出し、挑戦を重ね、それを事業の成長へとつなげていける環境を整えていきます。また、人材の多様性を高め、異なる業界や分野の専門知識や知見を組織の力へと変えることで、当社の可能性を切り拓いていきたいと考えています。

当社には、なお多くの成長の余地があります。これまで築いてきた基盤を生かしながら、企業価値の持続的な向上を目指していきます。当社の次のステージに、ぜひご期待ください。