社長メッセージ

  • 年内をめどに
    施工不備問題を解消し、
    「会社が主役」から 「社員が主役」の会社へと変貌を遂げていきます

    代表取締役社長
    宮尾 文也

レオパレス21の社会的価値とこれまでの取り組み

現在の日本において、単身者向けの貸家は約540万戸といわれています。当社の管理している物件の戸数約55万戸は、その1割にあたります。さらに、企業が社宅として当社物件を利用しているものも約30万戸に上っています。いずれの点からみても、当社はなくてはならない社会的インフラを提供している企業であり、その社会的責任もまた非常に重いものであると自覚しています。にもかかわらず、2018年には施工不備問題が発覚し、会社そのものの存続を危うくする事態を招き、同時にオーナー様、従業員、株主など様々なステークホルダーに対し、多大な損害を生じさせることとなりました。

現在では、その根本的な原因となったトップダウン型の組織風土を抜本的に改革し、コンプライアンス最重視の姿勢を徹底すると同時に、痛みをともなう様々な事業構造改革を実施することで、会社の収益構造改善と体質改善を進めてきました。その結果、業績は施工不備問題以前の2017年度を上回る水準まで回復してきており、施工不備問題についても、2024年中に明らかな不備を解消できるところまできています。

今回は、業績結果と見通しの説明だけでなく、会社の体質改善や今後のレオパレス21グループの在り方なども含め、ご説明をさせていただきたいと考えています。

2023年度を振り返って

2023年度の業績は、売上高4,226億円、営業利益233億円、当期純利益420億円となりました。この結果、営業利益、最終利益ともに3期連続の黒字を達成できました。要因としては、入居率は計画を若干下回ったものの、家賃単価の上昇や販管費の抑制が効いたことにあります。

入居率が計画を下回った要因としては、成約案件の収益性を重視したプライシング戦略を採用したことによる影響とみています。プライシング戦略では、収益性重視のために、低収益なマンスリー契約の抑制を図っています。その結果、3月末の一般賃貸住宅の入居率が前年同期比2.16ポイント向上したのに対して、マンスリー契約の入居率は0.19ポイント下落しています。このマンスリー契約抑制の影響によって、全体の入居率が計画値を下回る結果となっています。

営業利益233億円という数字は、施工不備問題の公表直前期である2017年度の数値を若干上回るものです。2017年度は、リーマンショックからの影響で当社賃貸事業への集中を打ち出した以降で、過去最高益でした。

営業利益が2017年度と2023年度でほぼ同水準とお話ししましたが、売上高については2017年度が5,308億円、2023年度に関しては4,226億円と、約1,000億円減となっています。この7年間で、収益体質の改善が大幅に進んでおり、その主要因は従業員数が7,690名から3,853名と半減したことによる固定費削減です。入居率についても、2017年度と2023年度を比較してみると、2017年度は年間平均入居率が90%で、期末が93%~94%近くに達していたのに対して、2023年度は年間平均入居率が85%、期末が88%と5ポイント低い状況でした。2017年度は、期中の入退去を考えるとこれ以上は増やせないというぎりぎりの状況で上げた営業利益でしたが、2023年度はもう少し余裕のある中で、2017年度を超す営業利益を上げることができており、家賃単価の引き上げなどをはじめとする収益力強化も着実に進んでいると考えています。

今回、2023年度の利益が2017年度を超す数値となったことで、業績回復のハードルを一段階クリアすることができたと考えています。

  • 業績推移

  • 戸あたりの売上高、営業利益

株価の推移と株主還元施

当社に対する外部の見方を示す一つの指標である株価は、この1年間で2倍近くになっています。これは、様々な取り組みにより一旦どん底まで低下した収益力が回復しつつあることが評価されているものとありがたく感じています。しかし、2023年度の営業利益が2017年度並みとなる一方で、株価については、まだまだの状況で、こちらについては、施工不備問題からのダメージを払拭するには至っていません。今後は、施工不備問題については必ずや2024年中の明らかな不備解消を達成すると同時に、当社の信頼性回復につながるような情報の発信などを積極的に行っていきたいと考えています。

一方で、株主に対する還元としては、ようやく2023年度に復配を果たすことができました。また同年度に、財務健全性および株価水準を考慮したうえで、自己株式の取得を実行しました。今後は、基本的に配当を中心とした対応を進めていく方針で、2024年度についても、増益達成を基本に増配を進めていきたいと考えています。さらに、その後については施工不備問題解決のめどがついた来年度には、収益面を含めた中長期的な目標を設定し、その中で、配当政策も含めた中長期的な株主還元についてご説明できればと考えています。

  • 2023年度は、2017年度並みの営業利益を上げることができ、収益力強化が着実に進んでいると考えています。

施工不備問題の進捗

施工不備問題の発覚以降、物件の調査と不備の改修に取り組んでまいりました。空室の調査に加え、入居者様がご利用中の部屋についてはご協力依頼の書面の郵送、SMS、電話などを通じて入室許可による調査や一時的な住み替えのご協力を頂くことで、2024年4月末時点で、明らかな施工不備が認められ、「要改修等」とされた戸数94,284戸に対して、68,320戸で改修を完了することができました。

残るは、「要改修等」のうち、すでに調査により明らかな不備が判明した住戸14,018戸と、未調査住戸でこれまでの調査結果を踏まえ不備が予測される住戸約2,390戸を合わせた、約16,400戸の改修が必要と考えています。残る期間から逆算すると、月間2,000戸を超えるペースで改修工事を進めていく必要がありますが、そのためにこれまで以上の施工体制の拡充を図っています。

今後の当社の未来のためには、施工不備問題の解決が一丁目一番地です。着実に施工不備の改修を実施し、目標期限とした2024年末までに明らかな不備の解消を進めていきます。

施工不備の件数の推移(2024年4月30日現在)

シリーズ 全棟数 明らかな不備棟数 明らかな不備棟総戸数  
要改修等  
改修完了等
ネイル・
6シリーズ※1
15,283 7,508 117,964 68,059 54,744
その他
シリーズ※2
23,802 3,763 58,266 26,225 13,576
合計 39,085 11,271 176,230 94,284 68,320
  • ネイル・6シリーズ...優先調査対象物件としていた商品シリーズ
    「ゴールドネイル」「ニューゴールドネイル」
    「ゴールドレジデンス」「ニューシルバーレジデンス」「ニューゴールドレジデンス」
    「スペシャルスチールレジデンス」「ベタースチールレジデンス」「コングラツィア」
  • その他シリーズ...それ以外の物件商品シリーズ
    当社が調査の対象としている当社施工物件のうち、優先調査対象物件を除いた42シリーズの物件を指します。

今後の賃貸住宅の見通し

当社の将来を考える前提として、日本の人口動向を除外することはできません。皆さんもご存じの通り、日本は2018年をピークに、人口減少社会に入っており、2030年には人口が1億人を割ると推定されています。人口全体としては急速に減っていくわけですが、当社の賃貸物件が対象とする単身者の世帯数は、人口の減少よりも緩やかな減少となると予測されています。

さらに、減少が続くといえども、減少は地域ごとにまだら模様を呈しており、場所によっては、20%、30%と大幅に減少する地域もあれば、ほぼ変わらない地域もあるとみられています。当社は、首都圏など人口減少が少ない地域を主なターゲットとしていることで、当面の人口減少の影響は比較的小さいと考えています。

さらに、建築、介護など様々な産業で働き手が不足しており、外国人労働者の受け入れを進めている点では、当社のような単身者向け住宅はその受け皿として、十分なニーズがあるとみています。

これらを総合的に勘案したときに、当社が抱えている賃貸住宅の管理戸数も現在の55万戸から減ることは避けられない状況とみていますが、その減少幅は小さく、地域によっては今後戸数が増えるところもあるとみています。

建築請負の再開に関して

当社は、管理戸数55万戸を抱えていますが、これらの物件の中には、築年数25年を超えるものも増え始めています。これらの築年数の物件に関しては、オーナー様が自己で管理する物件に移行するなどのいくつかの選択肢が想定されており、当社における建て替えもその選択肢の一つです。当社としては、施工不備問題が解決に向かった今後は、アパート建築を行う開発事業の再開を視野に入れており、築年数の古い物件の建て替えは開発事業の有力なターゲットと考えています。

このような古い築年数の物件については、オーナー様の高齢化が進んでおり、世代交代が見える時期にきています。今後はオーナー様のご意向に配慮しながら、次世代の方に対しても、当社の賃貸管理のメリットなどをしっかりと伝えつつ、建て替えにおいても当社を指名していただけるように、新規営業と同じように重要な営業活動として、アプローチを進めていきたいと考えています。

地域支社制の導入

当社は、施工不備問題発覚後、不備の解消を目指した工事と並行して、施工不備問題の原因となったトップダウンの横行、縦割り組織による蛸壺的思考による部門間の連携欠如などの問題を解消するために社風の改革を推進してきました。

その社風改革の総決算として、地域支社制の導入を検討しています。地域支社内には、賃貸の営業、法人向け営業、物件管理、契約後のオーナーとのコミュニケーションを行う担当、設計、工事の人材を抱え、支社内で基本的に完結した事業運営ができる仕組みを想定しています。

これまでも地域制を模索していましたが、最終的な決定権は本社にゆだねられているのが実情でした。今後は、地域ごとに決めたトップに対しては、明確なルールを定めたうえで、大幅に決裁権限などを委譲し、地域ごとの収益を重視した取り組みを強化します。地域ごとの収益重視は、地域の状況に関係なしにトップの一声で動く弊害をなくし、今まで以上に自分たちで担当する物件個々の収益性に対する意識向上につながると同時に、収益向上に向けて社員が個々で考える組織への変貌にもつながるので、新たなレオパレス21の姿として、地域支社制はふさわしいと考えています。

2024年度の見通し

2024年度は入居率と家賃単価の引き上げなどを主体とする収益最適化戦略により、売上高4,286億円、営業利益266億円と4期連続の増収増益を目指したいと考えています。

このうち、入居率については法人営業の強化、外国籍利用者の拡大などを中心に、年間平均入居率が87%、期末が90%と前期比で2ポイント向上を目指します。一方で、家賃単価の引き上げについては、収益性の悪い物件に対する家賃設定の見直しを徹底することで実現したいと考えています。ここまでで、見直しが進んだものの代表例としては、マンスリー契約があげられます。マンスリー契約は入居率を維持するなどの理由で相対的に安い家賃での契約が多く、収益改善の重しとなっていました。マンスリー契約の見直しでは、場合によっては解約となり、全体の契約件数が減ることで入居率低下につながっても、収益性を重視した契約見直しを断行したことが、家賃単価の引き上げにつながっています。この例を鑑み、ほかの契約に関しても同様に、単に入居率を重視するのではなく、家賃単価など収益性を考慮した見直しを進めていきます。

さらに、2024年度は、入居者獲得に関連したプロモーションに関しても見直しを進めたいと考えています。このプロモーションとしては、例えば、入居者に対する数か月間のフリーレントなどを想定しています。慣習的におこなってきたフリーレントに対して、その効果が実際に発揮されているのか、契約件数や契約年数などを踏まえ、メリットとデメリットを検証します。その検証結果と、現在様々なコストが上昇していることの影響を合わせ、最適なプロモーションのやり方の検討やコストの見直しを進め、最終的な収益改善につなげていきます。

  • 2025年3月期 経営方針

サステナビリティ戦略

DX推進の取り組み

当社では、2024年度の経営方針として、年末を期限とした明らかな不備解消、「収益最適化戦略」の実行による収益力強化とならんで、サステナビリティ経営の推進を図っていきます。当社におけるサステナビリティ経営では、生産性向上に向けたDX推進、当社の持続的価値創造に不可欠な人材の強化につながる人的資本経営の推進に加え、環境に関する取り組みを進めていきます。

このうち、DXにおいては、これまで賃貸住宅契約では避けることのできなかった部屋の鍵渡しという作業に対してスマートフォンなどで施錠・解錠が可能なスマートロックにおきかえることで、鍵交換、鍵の引き渡しなどの作業がなくなるほか、部屋の内見などにおいても鍵が不要になります。スマートロックを導入すると、1戸あたりにかかる関連業務の時間を平均42分短縮することができると想定されています。すでに27万戸でスマートロックを設置しており、年間約18万時間分の作業が削減できたことになります。

さらに、DX推進に関連して、昨年11月に部屋探しから申し込み・契約までをカバーするコンタクトセンターが本格稼働しました。これにより、入居前のお部屋探しを担当するコンタクトセンター、入居開始の事務を取り扱う契約事務センター、入居中の困りごとなどに対応するサービスセンターの3つによって、個人契約のお客様の契約から入居開始、さらに入居後のサービスなどを非対面で実施できるようになりました。その結果、全国に展開する賃貸店舗を、109拠点から70拠点まで集約することができています。

環境に関する取り組み

サステナビリティ戦略における環境に対する取り組みの一つとして、管理する賃貸住宅に対して、CO2排出量実質ゼロのLPガスを供給するサービス「レオパレスグリーンLPガス」を開始しています。これは、当社が出資するレオパレスグリーンエネルギーを通じて調達したLPガスを供給する仕組みを採用しています。供給するガスは、全てのバリューチェーンにおいて発生する温室効果ガスを、環境保全プロジェクトから得られたカーボンクレジットで相殺し、 CO2排出量を実質ゼロにしています。2023年1月から2024年3月までの累計供給量は約47万m3となり、この供給によるCO2排出抑制量は約3,000トンに達しています。現在では、先行して進めた「レオパレスグリーンLPガス」に続き、同様にCO2排出量実質ゼロの電気供給サービス「レオパレスグリーン電気」についても2024年6月からサービスを開始しました。生活に不可欠なエネルギー源のグリーン化によって、環境に貢献していきたいと考えています。

奨学制度の創設

当社では、住まいの提供を通じた社会的価値創造の一環として、当社が管理する賃貸住宅を活用した社会貢献を検討してきました。今回は、その一つとして、学費高騰や奨学金の長期返済などの社会的課題に対し、当社物件の無償貸与などによる奨学制度「レオパレス21奨学制度」を創設しました。

この制度では、2025年4月に日本国内の大学、短期大学、専門学校へ入学する学生を対象にしており、当社物件の無償貸与もしくは、年間36万円の奨学金を支給します。支給期間は在籍する学校、学部、学科における正規の在学年数となっており、奨学金の場合でも返済義務のない給付型となっています。当社が管理する賃貸住宅を活用し、経済的事情に左右されることのない、自由な進路選択を支援することで、社会的課題解決の一助になればと考えています。

  • 施工不備問題については、
    必ず2024年中の明らかな不備解消を
    達成してまいります。

最後に

2019年5月に社長交代の記者会見を行ったときから、当社は単身者の住宅インフラ供給を担うという重要な社会的価値を提供している会社であり、絶対になくしてはならないという強い決意のもとで再建に取り組んできました。現在は、ようやくその再建が果たされつつあることを実感しています。

とはいえ、元の姿にもどったのでは、意味がありません。これまでの弊害だったトップダウンを脱し、「会社が主役」から、「社員が主役」の会社に変わることで、これまでにないアイデアを実現し、社会に提供する価値を向上させていくことが大切だと考えています。

ステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも当社の経営にご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。