昨年度は、首都圏を中心とした家賃水準の上昇や、外国籍就労者の住まいに対する需要の拡大などを背景に、中期経営計画「New Growth 2028」の目標を上回る成果を収めることができました。中でも、より重要な指標として捉えているのは、増収率を大きく上回る増益率を実現したことです。売上高は4,448億円で前期比3%増だったのに対し、営業利益は359億円で前期比23%増となりました。これは、単に売上が拡大したというだけでなく、事業全体の収益構造が改善し、付加価値を加えて利益成長を伴う持続可能な事業モデルの実現に着実に近づいていることを示していると考えています。
セグメント別では、売上の大部分を占める賃貸事業の売上高が4,296億円と、前期比約3%増となりました。年度末入居率は目標値にわずかに届きませんでしたが、前期比では増加となり、関東圏を中心に家賃単価も改善できました。稼働管理の適正化に加え、良好な市場環境を追い風として、法人顧客に対するソリューション営業の強化や質を重視した営業戦略などが相乗的に機能した結果だと認識しています。
当期純利益は前期比で減益となりましたが、これは自己新株予約権の消却による特別損失が発生したためであり、本業の収益力に起因するものではありません。
| 2025年3月期 | 2026年3月期 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 431,831 | 444,820 |
| 売上原価 | 354,537 | 355,611 |
| 売上総利益 (売上総利益率) |
77,293 (17.9%) |
89,208 (20.1%) |
| 販売費及び一般管理費 | 48,062 | 53,242 |
| 営業利益 (営業利益率) |
29,231 (6.8%) |
35,966 (8.1%) |
| 32,734 | 39,211 | |
| 経常利益 | 26,936 | 34,842 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 17,861 | 14,933 |
2026年3月期の事業戦略面の成果としては、施工不備問題の発覚から6年ぶりに開発事業を再開したことが、最も大きな動きです。この6年間、当社は品質管理体制の徹底をはじめ、正面から施工不備問題の解消に努めてきました。この間は、取引先や、共に難題を乗り越えてくださったオーナー様との信頼関係を回復させる期間であったとともに、社内ではガバナンスとコンプライアンスを再定義し、組織全体が倫理観と自律的な規律を育んでいく期間でもありました。こうした取り組みを経て、開発事業の本格再開を会社として能動的に意思決定できたことには、数字以上の重みがあると考えています。財務面においては、自己株式の公開買付けおよび自己新株予約権の取得による資本構造の適正化の実現が挙げられます。
現時点における課題は、自己資本比率の回復、開発事業の持続的な拡大、シルバー事業の改善の3点です。自己資本比率は、自己株式の公開買付けおよび自己新株予約権の消却の影響により37.5%から23.0%へ低下しました。これについては利益と営業キャッシュ・フローを着実に積み上げ、段階的な回復を図っていく方針です。管理戸数を維持・拡大する上で重要な役割を担っている開発事業については、法人需要を的確に捉えた営業施策の推進によって収益基盤の安定化を図り、持続的な成長につなげていきます。営業損失が拡大しているシルバー事業については、子会社分割による経営課題の明確化を進め、早期の解決を図ります。
2026年3月期は計画を上回る実績で着地し、中期経営計画「New Growth 2028」の初年度としては順調なスタートとなりました。しかし、これは当社の持続的な成長に向けた通過点にすぎません。2027年3月期・2028年3月期の計画を上方修正したことも踏まえ、今後は市場環境に左右されず安定的に収益を上げる構造に転換することが重要だと考えています。
その実現に向けては、法人営業の強化と開発事業の拡大を推進するとともに、コスト管理の適正化にも取り組みます。これまでの経営再建の過程においてコスト管理を徹底してきましたが、その結果、人的資本を含め、付加価値を生み出すための投資も抑制された側面がありました。今後はコスト管理を維持しつつ、成長投資とのバランスを適正水準に戻し、成長を加速させていきたいと考えています。その上で、「New Growth 2028」に掲げた目標の達成に全力を尽くします。
株価については、中長期的に当社の企業価値を適切に反映した評価を得ることが重要だと考えています。業績目標や株主還元方針を着実に実行するとともに、成長戦略の進捗や成果を発信して当社への理解を深めていただくことで、評価の向上につなげていきます。
今後の成長に向けた重点的な取り組みは、大きく3点です。
1点目は、法人顧客に対するソリューション営業の進化です。社宅戦略支援や外国籍人材向け住居ソリューション、人的経営課題解決、BCP支援など、主として企業が抱える課題に対応するサービスを拡充し、「共創型ソリューション・プロバイダー」への進化を目指していきます。
2点目は、開発事業の選択的な収益化です。新築物件の建築に際しては立地の絞り込みを徹底的に行い、品質も重視しながら供給を拡大していきます。また、今後は地域ごとの需給や供給価格を見極めながら、自ら土地を取得・開発するデベロッパー方式による供給にも取り組み、管理戸数を維持・増加させていきます。
3点目は、DX・AIの活用です。当社は長きにわたって蓄積してきた約54万戸に関するデータを保有しています。これまで活用しきれていなかった膨大な情報も、現在はAIによる分析・構造化が可能になり、当社の優位性を生み出す資産に転換できる可能性が高まってきています。将来的な付加価値創出につながるものとして期待しています。
現在はDX化した賃料査定システムの構築を進めています。賃料の設定プロセスにテックを導入することで、物件の立地や間取り、築年数、日当たり、需給動向などを踏まえて最適な賃料を算出できるようになり、空室期間の短縮と期間収益の最大化を図れると考えています。こうした定型業務の自動化により、社員はより付加価値の高いビジネスに注力できるようになるでしょう。労働集約型の業務から知的集約型の業務への転換を進め、生産性の向上とROEの向上につなげていきます。
財務戦略においては、財務基盤の強化と成長投資の両立を基本方針としています。2026年3月期の一時的な自己資本比率の低下については、追加的な資本調達は想定していません。賃貸事業からの安定的な利益創出と営業キャッシュ・フローを積み上げることで自己資本を充実させ、現会計制度にて2028年3月期までに自己資本比率30%への段階的な回復を目指します。手元流動性の低下についても一時的なものであり、着実な回復が見込まれることから、現時点で大きな課題はないと認識しています。
バランスシートについては、保有資産を見直し、収益資産への組み替えを進めます。その一環として、中長期的に需要が見込まれる三大都市圏を中心に、自社での土地取得・開発にも取り組みます。開発事業部と財務経理部が連携しながら、機会費用や採算性を踏まえた投資判断を行っていきます。
| 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 自己資本比率(%) | 0.7 | 14.5 | 31.2 | 37.5 | 23.0 |
| 時価ベースの自己資本比率(%) | 45.7 | 70.5 | 80.1 | 85.6 | 114.3 |
| キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) | − | 3.0 | 1.4 | 1.2 | 0.8 |
| インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) | − | 2.4 | 5.2 | 14.9 | 42.7 |
資産配分については、財務基盤の安定化、成長投資、株主還元を個別に切り離して考えるのではなく、相互に連鎖するものと捉えて、まずは財務基盤の安定化から取り組んでいきます。そして財務基盤が強化されれば成長投資も可能となり、その投資により収益が拡大すれば、さらなる株主還元につながりますので、その好循環を持続的に回していくための資産配分を重視していきます。
資本効率や市場評価の向上に向けては、EPSの安定的な成長が重要だと考えています。入居率や賃料収入の向上、開発事業の収益化による売上高の拡大に加え、AIを活用した業務効率化や適切なコスト管理を通じて収益性を高めることで、EPSの持続的な成長を実現します。
現在は資本効率を重視した経営への転換も進めています。2021年3月期にファンドが経営参画したことを契機に保有資産についても資本コストを踏まえて収益性を検証するなど、従来にはなかった視点からの議論が活発化してきました。今後もROICがWACCを上回る状態を維持することを重要な経営指標の一つと位置付け、株主・投資家の皆様からの知見も取り入れながら、投下資本が十分な収益を生み出しているかを検証していきます。こうした取り組みを通じて、収益性と資本効率の両立を図り、持続的な企業価値向上を目指します。
ステークホルダーの方々に対しては適切な対話機会を設け、四半期ごとの情報開示を実施しています。今後はさらに、投資家の皆様が抱く根本的な疑問や、市場からの関心の高い内容に対し、事業を通じて答えられる体制を整備すると同時に、成長ドライバーとなる事業の見通しについても説明機会を増やしていきます。寄せられたご意見・ご質問は経営への直接的フィードバックとして真摯に受け止め、今後の経営や情報開示の充実に生かしていきます。
施工不備問題により社会的信頼を大きく損なった事実は、現在も当社の経営の根底にあり、私たちはその重みを決して忘れることはありません。その反省のもと、誠実な経営と事業運営を積み重ね、信頼の回復と企業価値の向上に努めていきます。
中長期的な成長に向けては、法人契約を軸とした賃貸事業の高度化を進め、企業の人的資本を支える戦略インフラとしての役割を高めていきたいと考えています。人口構造や働き方が変化する中でも、単身者や外国籍人材の住まいに対する需要は底堅く推移すると見込まれています。こうした社会のニーズに応え続けることで、賃貸市場における社会インフラ企業としての地位を確立していきます。
また、約54万戸の管理戸数、全国のオーナーネットワーク、長年培ってきた法人顧客基盤は当社独自の無形資産であり、他社が容易に追随できない大きな強みです。これらを最大限に生かし、オーナー様向けの新たなサービスや、法人顧客との協業による新たな事業機会の創出に取り組むことで、競争力のさらなる強化につなげていきます。
将来的には、単なる不動産賃貸業にとどまらず、住まいの提供を起点に、長年蓄積してきたデータやテクノロジーを活用してお客様に新たな価値を提供する「共創型ソリューション・プロバイダー」へと進化していくことを目指します。企業の課題解決を支え、社会にとって不可欠なインフラ企業としての役割を果たしていくためにも、短期的な業績目標を着実に達成しながら、長期的な視点で持続的な成長を支える経営基盤を構築していきます。
| 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属 する当期純利益 |
1株当たり 当期純利益 |
|||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % | 百万円 | % | 円銭 | |
| 第2四半期(累計) | 231,900 | 4.5 | 21,400 | 6.7 | 21,200 | 11.4 | 12,300 | 162.9 | 38.72 |
| 通期 | 465,000 | 4.5 | 38,500 | 7.0 | 38,100 | 9.3 | 22,200 | 48.7 | 69.88 |