社外取締役メッセージ レオパレス21の品質と信頼を支えるガバナンス 〜品質の定義を明確化し、継続的な向上を〜 社外取締役 中村 裕

着実に改善された
企業風土やガバナンス

最初に私のキャリアについてご紹介いたします。大学で経営工学を専攻していた私は、卒業後に入社したナショナル住宅建材株式会社(現・パナソニック ホームズ株式会社)で長く住宅の品質管理に携わってきました。その後、同社の品質管理・環境・CS(顧客満足)部門の責任者を務めながら、業界活動にも従事し、一般社団法人プレハブ建築協会のCS品質委員会委員長の経験などを通じて、行政や同業他社などと連携し、住宅業界全体の品質管理やCSの向上に取り組んできました。こうした経験から、2020年にレオパレス21の社外取締役に就任。以来、主に品質管理の観点から当社の改革を支えてきています。

2018年の施工不備問題発覚以降、当社は既存建物の調査・改修工事に全社を挙げて取り組み、2024年12月末までに、入居者様および建物所有者様のご協力が得られた明らかな不備のすべてについて、調査および改修等対応が完了しました。新築請負の停止など事業上の制約もある中で、過去の負の遺産の解消に真正面から向き合い、困難な課題をやり切ったことを高く評価しています。

この過程で、会社の体質も着実に変化してきました。私が就任した頃はトップダウン型の風土が色濃く残り、社員には指示待ちの姿勢も見られましたが、問題の解決に取り組む中で、一人ひとりが自ら考え、主体的に行動していく組織に変わりつつあります。経営層と社員が立場を超えて率直に議論できる組織文化も形成されはじめていると感じます。品質・コンプライアンスについても、「守るべきことは守る」という意識が組織全体に浸透し、社内の基準は極めて高いレベルに設定されています。正しい行動を徹底する姿勢が組織文化として定着したことは、ガバナンス改革の成果といえるでしょう。

人材基盤の強化も着実に進展しています。社員への資格取得支援や有資格者のキャリア採用を積極的に進めた結果、施工不備問題発覚後に課題となっていた有資格の技術者不足は解消されつつあり、現場の技術力も格段に向上しています。

品質の定義を明確にし
品質マネジメントを次の段階へ

このように体質改善は進んでいますが、改革はまだ道半ばです。品質管理を支える現場へ私自身も足を運び、社員と直接対話する機会を設けていますが、未だに「最後は誰かが決めてくれる」という意識が残っているのを感じます。これは経営層も同様です。こうした意識を取り払ってこそ、本当に自走できる組織となるでしょう。

加えて、今後取り組むべき重要な課題は、「レオパレス21にとっての品質とは何か」を明確に定義することです。施工不備問題があったため、品質というと建物の設計・工事の品質に焦点が当てられてきましたが、当社の事業の主軸は賃貸事業であり、入居者様にお貸しする居住空間やサービスの質も重要な品質だと認識することです。

私は、当社が大切にすべき品質は次の3点と考えています。まず、「この部屋に住みたい」と感じる快適な室内環境や管理状態など入居者目線の品質です。2つ目は、新築の建物品質のつくり込みおよび既存の建物の営繕(メンテナンス)やリフォームなどのハード面の品質。3つ目が、新築の受注活動から設計・施工・アフターサービスにおける施主様との接点の品質です。一つひとつのあるべき姿を明確に定義し、それぞれの水準を高めていくことが重要です。

これらの点において前向きな動きも見られます。賃貸事業本部では、建築技術部門と連携し、既存建物の営繕や、協力会社の清掃などによる建物の外部・内部の美化の強化に取り組んでいます。また、昨年度は建築技術部門に品質業務推進部が発足しました。一方で、同部は建築技術部門内にあるため、新築工事やメンテナンスなどハード面の品質には対応できるものの、入居者目線の品質までを担う体制にはなっていません。事業推進と品質管理という“アクセル”と“ブレーキ”の機能が同じ組織に存在しており、牽制機能を十分に発揮できない可能性もあります。そのため、今後は独立した立場から事業全体の品質を統括する組織を設ける必要があると考えています。品質面の課題を指摘するだけでなく、現場が直面する制約を踏まえた改善策を示していける体制が整備されれば、当社の品質はさらに進化していくでしょう。

開発事業の本格化で
改革の真価が問われる

改革が真に定着したかどうかは、新築物件の供給が本格化した段階で明らかになると見ています。現在、新築プロジェクトで発生した小さな不具合やエラーは会議で共有され、改善策を関係者全員で議論していますが、今後、着工件数が増え、事業規模が拡大していったときに、同じ姿勢を貫くことができるでしょうか。事業が拡大しても、会社が定めた品質管理の水準を維持し、さらに進化させることができて初めて改革は定着したといえるでしょう。そして、リスクの高い工程や協力会社の力量を的確に見極め、優先順位をつけて管理すること、また、実施する検査が実効性を伴っているかを継続的に検証していくことが重要です。

改革をさらなる成長に
つなげるために

改革をさらに前進させ、持続的な成長につなげていくために、経営層には以下の点を期待しています。

まず、新生レオパレス21の姿を積極的に対外発信していく。例えば、当社は昨年度にコンセプトもデザイン性も優れた新商品「ArLk」を発売しましたが、市場にその魅力を十分に伝えきれていません。社内で「新生レオパレス21」を掲げるだけでは、外部の評価や認識は変わりません。経営層には施工不備問題が完全に解決していない負い目があるのかもしれませんが、会社はすでに新たなステージに踏み出しているのですから、前に向かっている姿を、自信を持って社会に示していくべきです。

品質やCSは、現場を知らずに語ることはできません。会議で報告を受けるだけではなく、経営層自らが現場へ足を運び、入居者様からの視点で品質を確認するとともに、現場で働く社員や協力会社と対話を重ねてほしいと思います。現場を継続的にモニタリングし、現場と風通しのよいコミュニケーションを図ることは、問題の兆候を早期に把握し、未然に防ぐことにもつながります。

また、お客様の声を経営改善に活かすことも大切です。当社では、昨年度からCSや顧客のロイヤリティを測るNPS®(ネット・プロモーター・スコア)*という調査手法を導入していますが、重要なのはスコアそのものではなく、そこから何を読み取り、どのような改善につなげていくかです。前提となる品質を明確に定義した上でNPS®による評価と品質の向上を連動させ、継続的な改善に結びつける仕組みを構築してほしいと思います。

そして、会社の将来像を社員と共有することは非常に大切です。当社の社員は真面目で責任感が強い人が多いので、経営者がどのような会社を目指すかビジョンを明確に示せば、一人ひとりが改革をさらに自律的に進めていけるのではないでしょうか。

*NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標です。

将来の成長に向けた
長期的テーマの議論を

施工不備問題の対応に一定の目処がついた今、取締役会では長期的な成長戦略についての議論を一層深めていきたいと思います。市場環境の変化や不測の事態にも対応できる経営基盤を築き、持続的成長を実現していくためにも、事業ポートフォリオの多角化などの検討も必要でしょう。

当社は、全国に約54万室の管理物件を有していますが、貸し出すだけでなく、そのネットワークや顧客基盤を活かし、どのようなサービスが提供できるか、法人のお客様と協業できる可能性はないかを考え、挑戦する。それも、本社から全国一律の施策を展開するのではなく、地域が主体となって地域の特性を活かした施策を実行していく。まさしく現在、体制の構築を進めているエリア支社制が、人を育て、会社の成長エンジンになると期待しています。

コストとして捉えられがちな清掃やメンテナンスなどの事業を切り分け、収益を生み出す事業に転換していく視点も重要です。そのような収益性を意識した事業運営ができる人材の育成も必要となります。多様な専門性を持つ社外取締役の知見も積極的に取り入れながら、「部屋を貸す」から一歩踏み出し、事業機会を拡げて新たな価値を創出していただきたいと思います。

専門性を活かし、
実効性のあるガバナンスへ

社外取締役の役割は、経営を監督し、問題を未然に防ぐことにあります。今後、会社の事業に関わる、より幅広い専門人材が取締役会に加わり、より多角的で実効性のある議論が行われるようになることを期待しています。私自身も現場を見て捉えた課題を発信しながら、実効性のあるガバナンスに貢献していきたいと思います。

近年、社外取締役にもステークホルダーとの積極的な対話が求められています。異なる専門性を持つ社外取締役がそれぞれの視点から当社の取り組みや考えを発信することで、当社への理解や信頼はより深まるでしょう。

同時に、執行部門からの報告を受けるだけでなく、自ら実態を把握し、問題が顕在化する前に牽制機能を果たすことも重要な役割になると認識しています。

中長期の価値創造に向けて

当社の住宅には、多様な属性の方々が入居し、それぞれ異なる課題やニーズを抱えています。当社ではすでにコールセンターの多言語対応や見守りサービスなどの取り組みを進めていますが、安全・安心に配慮した女性専用住宅の提供なども検討する余地があるでしょう。入居者様や地域の課題に対して新たな価値を提供していくサービスには、成長の可能性が残されています。簡単なことではありませんが、当社単体ではなく、行政や他社と連携しながら、地域ごとの社会課題の解決に資する事業を展開していけるようになれば、当社の社会インフラとしての位置づけが、より確固たるものになっていくでしょう。

ようやく新たな成長に向けたスタートラインに立った今、その成長を確かなものにするために、「品質とは何か」を明確に定義した上で、多角的な視点から品質の向上に取り組む姿勢が欠かせません。各部門がそれぞれの専門性と責任のもとで品質向上に取り組み、組織全体で品質を支える体制を築いていただきたいと思います。その基盤の上に持続的な成長を実現し、社員一人ひとりが誇りを持って働き、力を発揮できる「社員が主役」の会社へと発展していくことを期待しています。